良い子のための童話シリーズ1
一人の小人さんが言いました。 「僕たちには食料が足りないよ。」 別の小人さんが言いました。 「何処に行けば食料が手にはいるの?」 五人の小人さんは唸りながら考えました。 「森には、怖いオオカミたちがいるよ。」 「街には大きな人間たちがいるよ。」 「だったらどうするの?」 一言も喋らない黒い小人さんは声高らかに笑いました。 「どうするの?じゃないよ。どうしたらいいかを考えてるんだから。」 「だったら、君にはどうにか出来るの?」 一人の小人さんが聞きました。 「ああ、できるとも。ただし、それは僕だけが生きていくための手法であって。君たちの事なんてこれっぽっちも考えてないんだけどね。」 「それでもいいよ。僕たちもそれを真似すればいいから。やって見せてよ。」 黒い小人さんはにこりと笑うと狩りの道具を出してきました。 「いいかい?見ててごらんよ?」 黒い小人さんはそう言うと窓の外に向かって弓矢を放ちました。 「あ、うさぎに当たったよ!スゴイや、君。」 小人さんは大喜び。 「なんだよ、しっかりみんなのこと考えてるじゃん。あのウサギなら5人で食べても多いくらいだ。」 小人さん達はウサギに群がります。
黒い小人さんを除いて。
突然シュッという音と共に、声もなく小人さんの一人が倒れました。 「どうしたの?」 小人さんは倒れた小人さんを抱き上げます。 「頭の後ろに弓矢が刺さってるよ。」 「彼奴がやったんだ!」 みんな黒い小人さんを睨み付けました。 「ごめんよ、みんな。手が滑ってしまったんだ。可哀想なことをした・・・。ちゃんと埋めてあげよう。」 黒い小人さんは目から大粒の涙を流しました。 「僕たちこそゴメンね。君を責めたりして。泣かないで。一緒に埋めてあげるから。」 小人さんはそう言うと、死んでしまった小人さんに刺さっている弓矢を引き抜きました。 「さぁ、埋めてあげよう。」 小人さん達は大きな穴を掘って丁重に死んでしまった小人さんを埋めて、お墓を作ってあげました。
「さぁ、さっき捕ったウサギを食べようか。」 小人さんは、ウサギの耳を掴んで走り出しました。 「待ってよ!」 他の小人さんも追いかけます。 黒い小人さんは一人お墓の前で俯いています。 「気を落としちゃ、だめだよ。」 一人の小人さんがもう一度お墓の前に戻ってきました。 「君の所為じゃないから。」 小人さんはそう言って黒い小人さんの肩を優しく叩きました。
「アレ?あの子はどうしたの?さっき、君の様子を見てくるって出ていったんだけど。」 「さぁ?さっき会ったけど。何処行っちゃったのかな?」 黒い小人さんは首を傾げました。 「僕、捜してこようか。」 「いいよ、もしかしたらトイレかもしれない。先にウサギを食べてよう。」 小人さんはお皿を出してウサギのスープに近づきました。 「待って、僕が捕ったウサギだから僕がやるよ。」 黒い小人さんは、小人さんからお皿を受け取って、スープの前に立ちます。 「ありがとう。」 小人さん達はにっこり笑いました。 「いただきます。」 小人さん達はお行儀良く合掌します。 「そういえば、あの子何処行ったのかな?」 「長いトイレだね。」 そう言いながら小人さん達はスープを口に運びました。 「ねぇ、ほんとに君知らないの?」 小人さんが黒い小人さんに訊きました。 「知ってるよ。」 黒い小人さんは笑います。 「だって、僕がナイフで刺し殺したんだもの。」 黒い小人さんはにやりと笑いました。 「え?」 小人さん達は目をまあるく開けて驚きます。 「ほんとだよ。僕、始めに言ったじゃないか。僕だけが生きていくための手法だって。」 「だったら、なんで、僕たちは生かしておくの?」 小人さんの声は少し震えています。 「生かす?何を言ってるの?隣を見てごらんよ。」 小人さんが黒い小人さんの言うとおり隣を見ると、口から血を流して静かに眠っている小人さんの顔がありました。 「ひゃっ!」 小人さんはひっくり返ります。 「無駄だよ。君も同じモノ食べたじゃないか。」 黒い小人さんが言い終わるより先に小人さんの息は絶えていました。 「さてと。食い扶持が減れば食料のなくなるスピードも落ちるし。こいつらを綺麗に保存して、ちょっとずつ食べていけば、だいぶ足しになるし。僕だけなら十分生きて行けるよね。」 黒い小人さんはそう言って一人で笑います。 「バカな奴らだよ。注意深く人の話を聞かないから。」 黒い小人さんは嘲笑しました。
けれど、黒い小人さんの両目からは一粒ずつ涙が流れていました。 黒い小人さんはこれからたった一人で生きていかなければならないのでした。
妙に色んな人に気に入って貰った小人さんです。 ところで、ある友人が私の文は頭の良さを感じさせると言っていた。 |